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一井 亮治
参加者

     第二十話

     二人が訪れた時空――それは真夏の夜の宮中である。突如、現れた二人に殿上人装束の男が悲鳴をあげた。
    「ひぃっ、もののけだ。お助けぇ……」
     腰を抜かし逃げ去る男に桜子が憤慨する。
    「誰がもののけよ。失礼ね!」
    「フフッ、あれは藤原道隆ね。随分と気の小さい男じゃん」
     笑う京子だが、さらに別の場所からも悲鳴が聞こえ人影が走り去った。道隆の弟の道兼だ。
     どうやら肝試しをやっているようである。
    「さて、お目当ての殿方はどうなのかな」
     京子は意味深に笑うや、桜子と大極殿へと向かった。すると暗闇の中を小刀で柱に細工を施す男がいる。藤原道長である。
     桜子と京子の気配に気がついた道長は、声を上げた。
    「何だお前達は!?」
    「時空の旅人でーす。やーご先祖様にお会い出来て光栄っす」
     実に軽いノリの京子に道長は、怪訝な表情を浮かべている。やむなく傍らの桜子が事情を話した。
    「ほぉ、未来からの使者、と……」
     道長は驚きの表情を浮かべている。そこへ突如、宙に光が放たれ、見覚えのある男が手下と思しき者達を引き連れ現れた。
    「オニヅカ!」
     吠える桜子にオニヅカは、眼鏡を手で押さえながら笑った。
    「久しいですな、お嬢さん。わざわざ危険を承知で乗り込んでくるとは、大胆なことだ」
    「アンタの狙いは、このクリスタルでしょう」
    「いかにも。だが今回、用があるのはそちらの御仁だ」
     オニヅカは、道長の方を向き跪いた。
    「道長様、お迎えに参りました」
    「それはどういう事だ?」
    「こういう事です」
     怪訝な表情を浮かべる道長に対するオニヅカの答えは、驚くべきものだった。なんと懐から銃を取り出し、発砲したのだ。
     自分の祖先を撃てば、それは子孫の自身にも跳ね返ってくる。にも関わらず、オニヅカは道長を倒してしまった。
     驚き慄く桜子に京子が囁く。
    「大丈夫よ、桜ちゃん。多分、麻酔銃だから」
     その上でオニヅカに吠えた。
    「オニヅカ、アンタとあたいは同じ藤原の血を引いている。一体、どういうつもりなのさ?」
    「簡単な事です。私がこのギャンブルでベットするのは、伊周様。道長様には別の道を歩んで頂きたいのです」
    「出家でもさせるつもり?」
    「推測はご自由に。さて藤原京子、お前には実弾をくれてやろう」
     引き金に指をかけるオニヅカだが、遠方から銃声が響きその銃が弾かれた。
    「くそっ……仲間がいたのか」
     オニヅカは腕を押さえ舌打ちするや、手下の男達に命じた。
    「この小娘らをひっ捕えろ!」
     周りを男達に取り囲まれる中、桜子と京子は背中合わせになって身構えた。
    「どうするのよ、京子?!」
    「大丈夫。桜ちゃんは道長さんを守って」
     京子は背中越しに囁くや、何と包囲を狭める男達に向かって逆に打って出た。
     体格差をものともせず、見事な体捌きで男達を倒していく京子に、桜子は驚きを隠せない。
     ――凄いっ……。
     固唾を飲んで見守る中、ついに京子は全ての男達を片付けてしまった。
    「おのれ小娘がっ!」
     オニヅカは床に落とした銃を拾い直し京子に照準を合わせる。だが、その顔は突如、苦悶に歪んだ。振り返ると、目覚めた道長がふらつきながらも小刀を握りしめ立っている。
     思わぬ一撃を背中に受けたオニヅカは、床に膝から崩れ落ちた。それを見た京子が、前に立ち言い放った。
    「アラン・オニヅカ、もといアラン・フジワラ。時空脱税及び歴史改変罪で逮捕する」
     手にした端末を操作する京子に、床に倒れた男達が次々に光の中に吸い込まれていく。やがて、その光がオニヅカに及ぼうとした矢先、別の光が現れそれを阻んだ。
     何事かと驚く京子だが、突如として人影が現れる。その顔を見た桜子が声を上げた。
    「志郎兄っ!」
     ずっと姿を消していた志郎の突然の出現に桜子は、驚きを隠せない。だが、志郎は桜子に構うことなく京子に発砲した。
    「うっ……」
     呻き声とともに倒れる京子に、桜子は息を飲みその体をゆすった。
    「京子っ、しっかりして!」
     だが、京子の反応はない。動揺する桜子が振り返ると、志郎が銃口を桜子に向けている。
    「志郎兄、この私を撃つ気なの!?」
     呆然とする桜子だが、志郎の目は本気だ。引き金に指をかけた志郎だが、突如、桜子の前を道長が身を持って塞いだ。桜子は思わず声を上げた。
    「道長さんっ……」
    「誰だか知らんが、女性に手を出すのは感心せんな」
     道長はそう言い放ち、志郎から桜子を庇い続けている。流石に道長をやる訳にはいかず、志郎は諦めたように銃を直すや、オニヅカを抱えこの時空から去って行った。
    「道長さん、ありがとうございます」
     頭を下げる桜子に道長は「大したことじゃない」と首を振り、京子に応急手当を施した。どうやら急所が外れていたらしく、命に別状はなさそうである。
    「桜子さんとやら、さっきの男は君のお兄さんかい?」
     道長の問いに桜子は、表情を曇らせながらうなずく。道長は同情を見せつつ、言った。
    「私達も似たようなものだ。同じ一族で陰謀を張り巡らせ権力を奪い合っている。実に嘆かわしい」
    「あの……道長さんは、どんな世を理想とされているんですか?」
    「平安の世だ。だが、現実は違う。なら勝たねば。相手が一族でもな。君にも分かるときがくる」
     道長は桜子の心境を察しつつ、徐ろに立ち上がった。
    「さ、ここは私が何とかする。君達は帰りなさい」
    「はい、道長さんも気をつけて」
     桜子は内裏に戻っていく道長の背中を見送るや、怪我を負った京子を抱え平安の時空から姿を消した。

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