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一井 亮治
参加者

     第四十話

     夏休みの終わりが迫っている。今、桜子が必死に取り組んでいるのは、自由研究である〈税と歴史〉の論文だ。
     サクラとの最終決戦で、桜子を助けてくれた英霊達に応えるべく、自身が考える税の考えをまとめているのだ。
     無論、セツナが提唱した無税国家論についても考慮を重ねている。もっとも考えれば考えるほど悩ましいのが、税金だ。ゆえにペンも一筋縄では進まない。
     それでも桜子には、確信があった。
     ――税制こそが国を救い、もしくは滅ぼす。
     直接税に間接税、法人・個人・消費などあらゆる活動にかかる税――かつては窓の大きさや間口の広さに課税され、それが経済活動の実態を歪めてきた側面は否めない。
     だが、桜子は思う。
    「税を申告し払うことで。社会の一員になりたい」
     もっとも現行の税に多くの問題をはらんでいるのも事実だが、それは知恵でなんとかなるはずだと睨んでいる。
     やがて、シャウプ勧告の翻訳本を閉じた桜子は、机上で輝きを見せるクリスタルに目を細めながら言った。
    「代表なくして課税なし。税とは政府と国民が交わした約束なり……皆、正しいんだろうけど、私にとってはケースバイケースよ」
     その後、桜子は黙々と持論を書き連ね、遂にこれを一本の論文に仕上げた。
     ――落ちこぼれの私だけど、それでも家族と同じ職を仕事にしたい。これは、その第一歩。
     桜子は拙いながらも必死に考えた論文を兄の志郎に見せた。しばし真剣に読み込んでいた志郎だが、やがて、桜子に指でオッケーマークを作る。
    「桜子、バッチリだよ。とっつきにくいが掘り下げれば奥が深いのが税金だ。試験の方も俺が応援するよ」
    「ありがとう志郎兄……」
     安堵する桜子だが、そこへクリスタルが光を放ち始めた。どうやらまた時空課税上で問題が起こったようである。
     その輝き度からして、シュレや京子達では手に負えない物件らしい。
    「オーケー、じゃぁ行こうか?」
     やれやれと肩をすくめ立ち上がる志郎に、桜子はうなずきクリスタルを取る。互いに目配せを交わした後、二人は次なる時空へと飛び立っていった。(了)

      オワタ……