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一井 亮治
参加者

     第一話
     
     智に働いて丸め込む。
     情に棹させて流させる。
     意地を通してキリキリ舞い。
     とかく人の世は、要領だ。
     
     漱石を茶化して国語教師にマジギレされた私〈夏目葵〉だけど、この世に生まれて十六年──努力というものをしたことがない。
     勉強なんて所詮、山張りよ。教師の顔に出てんじゃん。「ここ試験に出しますよ」って。
     部活も一緒、ラクロス部に入って三ヶ月ではやレギュラー入り。今では勝負師としてチームを引っ張ってる。
     そんな人生イージーモードな私だけど、最近、壁にぶつかってる。その一つが右隣の座席に腰掛ける御仁よ。
    「愛してるぜハニー。これは俺の気持ちだ。受け取ってくれ」
     教室で恥ずかしげもなく婚姻届を片手に求婚を迫る同級生、冬月小次郎だ。えんじ色の縁メガネから、鋭い視線を向ける不良のごろつきで、成績も下から数えた方がはるかに早い落ちこぼれ。だから、言ってやった。
    「学力テストで私を抜いたらね」
     要するにタイプじゃないから諦めろって遠回しにフったんだけど、いやマジでビビったわ。本当に私を抜きに来た。中間テストで一位の私に一点差で迫って来たのだ。
     ──危なっ……。
     思わず肝を冷やしたわ。頭は悪いけど、地頭はずば抜けてる。癪だけど認めよう。これって決めた時の集中力って、やっぱ男子ね。
     さて、もう一つの壁が左隣にお座りのアフリカ系黒人ハーフのケイン春日よ。いかにも弱気で自信なさげながらもその実、理工学系に長けたメカオタクで、国際特許も有している。
     この殿方が、また冬月とは違ったアプローチでプロポーズをかけて来た。
    「その……け、結婚を前提にお付き合いを考えております」
     びっくりするくらいの真面目さよ。フろうものなら、その場で腹を切ると包丁まで用意する徹底ぶり。いやまいったわ。
     ま、そんなこんなで両手に花ならぬ不発弾を抱えた私だけど、その心中たるや穏やかではない。せめて不発弾のままでいてもらいたかったのだけど、そうは問屋が卸さない。
     かくして私の人生は、水と油な二人の同級生に挟まれ翻弄されていくこととなる。
     困惑しきりな私だけど、その一方でこうも思っている。
     ──でも、二人ともちょっと頼もしかったりするのよね。

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