返信先: 【新企画】桜志会×スポ根学園モノな挿絵小説

トップページ フォーラム 掲示板 【新企画】桜志会×スポ根学園モノな挿絵小説 返信先: 【新企画】桜志会×スポ根学園モノな挿絵小説

一井 亮治
参加者

     第二十話
     
    「で、皆で誓いを立てたって訳か」
     次の日、学校で打ち明ける私に冬月が食いつく。私はうなずき内容を冬月とケインに晒した。これにケインが深々とうなずく。
    「アメリカの闇デスね。原住民に限らず、僕らアフリカ系黒人も皆、耐え難い扱いを受けて来た歴史があります」
     私は同意しつつ、頭を痛める。脳裏をよぎるのは、成瀬先輩の指摘していた内通者の存在だ。十中八九、谷先輩であることは、想像に難くないものの、確証には至らない。
     そんな私に冬月とケインが自身の胸を叩く。
    「ここは俺達に任せてくれ」「イエッス。作戦、ありマス」
     自信ありげな二人だが、今一つ信頼を置けない。チャイナドレスの一件といい、メイドドレスの一件といい、これまで散々、騙されてきたからね。
     だが、一人では進展が見込めない以上、頼らざるを得ない。結局、頭を下げた。
    「一つ、頼むわ。方法は任せるから」
     後から思えば、これが誤算の第一歩だった。この時点で、そのミスに気づくべきだったのだ。後ほど、これを身をもって痛感することとなる。
     翌日、学校へ赴くと冬月とケインがいない。休みかと思い連絡を取ろうとしたものの、繋がらない。それだけではない。懸案の谷先輩まで失踪したのだ。
     私の危機センサーが働く。
     ──これは、何かあったんだ。
     気が気でない私だが、事態はこれで終わらない。授業を終え帰路につく私だが、そこへ車が滑り込んできた。
     現れたのは、成瀬先輩とミアだ。
    「夏目さん、早く乗って!」
    「え、や、なぜ……」
    「いいから早く!」
     急かされた私は訳が分からないなりに車内へと乗り込む。後部座席に座るミアの隣に腰をおろした私は、車の中で成瀬先輩からとんでもないものを見せられた。
     失踪した三人の遺体写真だ。
    「そんな……皆して死んだなんて……」
     頭が真っ白になる私に、成瀬先輩は追い打ちをかける。
    「夏目さん。感傷に浸っている暇はないわ。今、捜査線上のトップに上がっているのが、あなたとミアさんよ。指紋が検出されたらしい」
    「ちょっと待ってくださいよ。指紋って、私は何も……」
    「それは通じない。いい? お二人は何者かに嵌められたのよ。すでに上層部はあなたを犯人と決めつけ、逮捕の段階に入っている」
    「そんな……」
     あまりの仕打ちに私は、声を上げる。事案の特殊性を鑑み疑いが晴れることはないという。結局、ほとぼりが冷めるまで潜伏してやり過ごすこととなった。
     成瀬先輩から当面の食費と着替えの提供を受けた私とミアは、隠れ屋に入った。驚くべきことに、あらゆる活動が出来るようVRを含め必要な機材が全て揃っている。
    「夏目さん、ミアさん。これで戦える?」
    「もちろんです」「同感よ」
     私達は驚きを交え成瀬先輩に頭を下げた。正直、ここまでやってもらえるとは思っていなかったからね。
     やがて、去り行く成瀬先輩を見送った私達は、真の敵を暴くべく活動を開始する。セッティングされたVRを取るや、再びアメリカの原風景たるナキアの元へとダイブした。
     
     
     
    「必ず来られると思ってました」
     仮想空間で再会するや、ナキアは笑顔で出迎える。そこで意外な事実を述べた。
    「実は来られているのは、お二人だけではありませんよ」
     ──はて。一体、何者かしら。
     勘を働かせる私だが、ナキアはその名を出さない。ただヒントはくれた。
    「まどろっこしいことこの上ない人……ってことで分かるかしら?」
    「えっ……そりゃ分かるけど、本当に!?」
     思わず声を上げる私にナキアは苦笑しつつ、ミアとともにアメリカの原風景を進んでいく。
     その途上でおもむろに切り出した。
    「お二人は、なぜこの国が世界を獲ったと思われます?」
     奇しくもミアとの答えは一致した。曰く「移民」と。事実、さまざまな要因はあれど、建国当時は僻地の弱小国に過ぎなかったアメリカは、大量の移民を受け入れ大国へと成長した。
     現在でも先進的な企業の多くは、移民をルーツに持つ若者が創業している。彼らは新しいアイデアや新しいエネルギー、価値観をもたらすのだ。それが国を発展させていく。
     無論、問題点も多い。特にネイティブアメリカンは白人移民に駆逐されてきただけに、その捉え方もセンシティブだ。
     その辺の事情を問うてみると「複雑ですね」と、心境を漏らつつ逆に問い返した。
    「ナツさん、あなたの国はどうですか?」
    「心配よ。ミアは?」
    「や、別に不安はないけど」
     何でもないことのように話すミアに私は、問いを重ねる。
    「ナキアみたいに自分達の伝統や文化、雇用、治安が奪われないかって話、不安はないの?」
    「うん。移民に雇用を奪われても、新しい雇用を生み出してくれる。伝統も然り、古きを知るは新しきを求めるためよ。正直、アイデンティティなんてつまらないこだわり、どうでもいいわ」
    「……ミア、アンタらしいわね」
     思わず苦笑する私とナキアだが、やがて目的の人物が待つテントに辿り着いた。
    「お待ちですよ」「水入らず。ご自由に」
     手を振る二人に促されるまま、私はテントの中へと入る。そこで待っていたのは、メガネに髭面の神経質な中年男性と、同様にメガネをかけ心配げにスカーフをまとう中年女性──私が最も苦手とする両親だ。
     早速、私は挨拶抜きでなじった。
    「普段、放ったらかしなのに一体、どういうつもりよ」
     対する両親は、当然だとばかりに応じる。
    「娘の危機よ」「いかにも、駆けつけない親があろうか」
     ──よく言うわ。前回なんて算式一本、寄越して済ませたくせに。
     私は呆れつつ問うた。
    「で、何用? 冷やかしなら間に合ってるけど」
    「そうツンケンするな。父さんはな、これがお前にとっていい機会になると読んでいる」
    「どう言うこと?」
    「こう言うことよ」
     父さんに変わって、母さんが一本のレポートを差し出す。何でも裏ミネルヴァノートをさらに飛躍させるものだという。
    「まずは、これを読んで価値を生める大人になりなさい。話はそれから、いい?」
     こんこんと説かれた私は、仕方なくそのレポートに目を走らせていく。はじめこそ嫌々読んでいた私だが、内容が核心に差し掛かるにつれて貪るように熟読した。
     ──そう言うこと、か。どうりで私が狙われたわけだ。アレックスが産んだ繋がりも、ラクロスも計算尽くだったんだ。
     私は頭がクラクラする思いで、内容をまとめるや、両親に念を押すように問うた。
    「母さんに父さん。要するにこう言う話よね」
     私の要約を受け、二人は「そう言うことよ」と大いにうなずいている。
     ──全てはこの国を覚醒させるため、その触媒がこの私……。
    「はっきり言うわ。なんで父さんも母さんもこんなにまどろっこしいの? 随分と手の込んだ真似……」
    「仕方がないだろう。世の中、一筋縄ではいかない。それにこの国に残された時間も限られている。自然、絡め手にならざるを得ないって訳さ」
    「それに葵、これはアンタのためでもあるのよ」
     父と母は、代わる代わるその意義を説く。はじめこそ真面目に聞いていたものの、そのうち面倒くさくなって、こちらから説明を打ち切らせた。
    「分かったわよ。要するにやればいいんでしょ」
    「娘よ。分かってくれたか。ならかかってくれ。士郎と玄蔵爺さんの連絡先はここ、桜志会の広田会長が待っている。いいか。真の敵を見誤るな。皆、お前にかけている」
    「ふん。結構なこと。言っとくけど本当に思う存分、やらせてもらうからね」
    「構わん。存分にやれ。責任は全て私達が取る」
     そういうや両親は満足げにうなずき、去って行った。その背中を見送りながら、私はつぶやく。
     ──癪な両親ね。いいようにあしらってくれるわ。
     憤慨しつつ、頭の中は最後の決戦に向けて目まぐるしく回転していた。

    • この返信は2週、 2日前に一井 亮治が編集しました。
    Attachments:
    You must be logged in to view attached files.