返信先: 【新企画】税法を萌えキャラで擬人化した動画小説
トップページ › フォーラム › 掲示板 › 【新企画】税法を萌えキャラで擬人化した動画小説 › 返信先: 【新企画】税法を萌えキャラで擬人化した動画小説
第三話 デューデリジェンス魔術
大ダコとの戦いを制した俺達だが、船の損傷は著しく、一旦、修理を兼ねて中継ぎ貿易港にアンカーを下ろすこととなった。
その間、陸地に足を踏み入れた俺はゾラと、かつて彼女が師と仰いでいたハミルトンのジムを訪れる。齢四十と言ったところか。未だに現役にこだわる姿勢はさるものだ。
だが、歳には勝てない。スパーでもたちまちゾラに圧倒されてしまった。
「ゾラ、もはや教えることは何もない。免許皆伝だ」
ハミルトンの言葉に礼を述べたゾラは一人、シャドーへと入っていく。その鬼神の如き動きを眺めつつ、俺は思った。
──案外、プロでもやっていけるんじゃないか。
そう思わせるレベルには、達している。試しにプロになる気は無いのかを問うたのだが、答えは実にあっさりしていた。
「興味ない。それよりこれからは魔術よ。よく分かんないけど、志郎は異世界にいたんだよね。肉弾戦を主とする私のファイティングスタイルに合った方法ってない?」
「んー……まぁ俺が知っている税法の計算技能に無くはない。〈五分五乗課税〉って分かるか?」
「知らない」
「いわゆる平均課税制度って奴だ。五分の一にして控除と低税率を適用し、五倍に戻し直す節税的なテクニックさ。これをこの異世界に当てはめると、かなりマナを節約出来る。俺がいた税法世界では廃止されたが、この魔法世界では有効なテクニックだと思うぜ」
「いいじゃん。やってみる。頼むよ」
ポンっと無造作に防具を渡された俺は、思わず言った。
「や、ちょっと待て。俺を練習相手にするのか!?」
「いーからさっさと防具をつけて」
とんだことに巻き込まれた俺だが、ゾラの旺盛な好奇心を止める事が出来ない。
──とんだ藪蛇だ。
俺は嘆きつつ、言われるがままにリングに上がり、スパーの相手を務めることとなった。
まさにボヤキのとまらない。だが、後々これに救われることとなる。
出航の準備が整った。晴れて再出発となった俺達は、意気揚々と船出する。目的地たるメゾリア大陸が迫る中、俺はソフィア、ゾラと話し合った。
「今一度、確認する。俺達は体内に宿るエネルギー・マナを呪文で燃焼させ、魔法なる超常現象を引き起こす。だが、マナの鍵を握るイリア姫が魔王に攫われ、これに立ち向かうべく預言書がうたう五人の救国戦士を募っている。だよな?」
「そうさ」「間違ってないよ」
同意する二人に俺はさらに続けた。
「以前、話したと思うが、別世界から来た俺にとってこの世界は、税法ワールドだ。税にまつわる知識が、こちらの世界の魔法革命を支えている。それはいいとして、俺は魔王タケモトの最終目的が気になる?」
「そりゃこの世界を支配下に置くことだろう」「私もそう思うよ」
うなずく二人に俺は腕を組み考える。どうも何か引っかかるものが感じられてならない。何か別の目的があるように感じられるのだ。
──何せ五科目を一発で決めた官報合格者だ。ただものとは思えない。必ず裏があるはず。
やや疑心暗鬼気味な俺だが、何はともあれ今は五人の救国戦士だ。メゾリラ大陸に着き次第、情報収集を考えていた。
さて、そのメゾリラ大陸に到着した俺達だが、何やら様子がおかしい。至る箇所から黒煙が上がり町が破壊されている。どうやら魔王軍の襲撃にあったようだ。
だが、陥落は免れたらしい。その原因を調べると、我らが求める二人目の救国戦士・ジークハルトにあるという。かなり腕の立つ魔法使い野郎で、もしこのジークハルトがいなければ、とっくにこの港町は陥落していたとのことだった。
──頼もしい。幸先がいいぞ。これなら二人目は楽勝だ。
安堵する俺はソフィアとゾラを引き連れ、ジークハルトなる魔法使いのもとを尋ねたのだが、甘かった。そもそも会おうとしない上に、あろうことか王国側にも魔王側にも付かず、独立を堅持するというのだ。
「おかしいね」
首を傾げるのは、ゾラだ。以前は独立に固辞する性格ではなかったという。俺達は怪訝に感じつつ、ジークハルトとの面会を諦め、街で調べを進めると人によって全く評価が異なっている。
ある者は独立心旺盛と評し、ある者は従順誠実という。さらに別のものは面従腹背とまで言ってのけた。この豹変ぶりに〈十面相〉なる二つ名がついたジークハルトだが、俺は確信を持って断言した。
「間違いない。所得税キャラだ」
というのも日本の所得税は、利子所得から雑所得に至るまで幅広く十種類に区分されている。
事業所得を実額経費にしたかと思えば、給与所得を概算経費にしたり、退職所得のような長年の勤務対価を鑑み軽減したかと思えば、資産売却に見る譲渡所得の如く一時的に高額となることから他の所得と区分したり、といった具合だ。
つまり、たとえ今、断られたとしてもいずれ豹変し、俺達に靡くことも十分に考えられる。よって、俺達は焦ることなく、待つこととに決めた。
無論、その間は街の復旧にも尽力する。覚えがよくなれば、ジークハルトの心象が変わることもあり得る。動くときは動くが、待つとなれば腐るまで待つのが俺流である。
案の定、慈善活動に身を呈して三日後に、ジークハルトから知らせが入った。使いの者が切り出す。
「魔王軍が再度迫っています。それも魔王本人を引き連れて。ジークハルト様は任務のご依頼です。是非、魔王軍を偵察願いたい、と」
「偵察任務をこなせば、会わせてくれるんだな」
念を押す俺に使いの者は、肯定してみせた。となれば、あとは動くのみである。
「ソフィア、ゾラ、行こう」
立ち上がる俺に二人は、大いにうなずき、港町から偵察へと赴いて行った。
「あれが魔王軍か……」
偵察に赴いた俺達は、鉄壁の陣営を構築する敵軍に息を飲んだ。まさに大軍だ。流石のソフィア、ゾラも威容さを前に声を失っている。
──歩兵五万、魔術化師団二万に近衛が一万弱と言ったところか。しかも斥候対策が練られている。この難敵をどう偵察するか。ここは一つ、資産税キャラたる二人に評価をさせてみるか。
俺は言った。
「ソフィア、ゾラ、奴らを数だけなく戦力として把握したい。つまり、デューデリだ。やれるか?」
「構わないけど、どうやってさ」
「魔法でだ」
「無理」
即答するソフィアは、理由を説明した。曰く、距離が遠いと。敵戦力を性格に把握するには、かなり肉薄しなければならないらしい。
「じゃぁ、こういうのでどうだ?」
俺は作戦の全体像を晒していく。初めこそ神妙な顔つきでうかがっていた二人だが、最後には納得の表情に変わっている。
「よし、じゃぁ行こう」
俺は二人を引き連れ、魔王軍が展開する仮設陣地へと迫った。その上で門番を担う兵に背後から迫り、肩をポンポンっと叩く。
振り返り驚きの表情を見せる門番の声を封じるべく、ゾラに襲わせ気絶させた。これを三回程繰り返し、魔王軍の甲冑を調達するや、変装して陣地内へと忍び込む。
「どうだ。二人とも」
「オッケー」「完璧よ」
二人は快諾するや、次々と戦力を暴いていった。それは資産税の評価算定と似ている。路線価から宅地を、各指標と財務から株価を弾くが如く、綿密な兵力を割り出し暴いていく。
十分も立たないうちに完璧とも思える情報をすっぱ抜くことが出来た。
「いいぞ。十分だ。バレないうちにズラかろう」
小声で囁く俺に二人は同意する。だが、ここで最後に失態が出た。身ぐるみを剥がした門兵が他の兵に見つかったのだ。たちまち敵襲の笛が鳴り響く。
俺は舌打ちしつつ「ここは俺がひきつけるから」と二人に偵察情報を託す。
「ちょっと待ちなよ。いくら何でも」「そうよ。キケン過ぎる」
異議を唱える二人だが、何ぶん時間が残されていない。やむなく二人が去るのを見届けた俺は、囮として極力粘った上で陣地からの脱出を試みた。
だが、ことは簡単に運ばない。突如、背中に激痛が走った。見ると矢が甲冑を貫いている。たちまち鮮血が迸り、俺は激痛に喘ぎながら包囲する魔王軍に連行されていった。

