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一井 亮治
参加者

     十二話

     帰宅した桜子は早速、志郎とともにソフィアから受け取ったURLをノートパソコン上に表示させた。だが、出てきたのは広告のページばかりで、これといった内容に辿り着かない。
    「おい桜子、どう言うことだよ。何かの間違いか?」
     異議を唱える志郎に桜子は、かぶりを振る。
    「分からない。でもURLはここで間違っていないはずよ」
     二人は画面の至る所を調べるものの、めぼしい手がかりは無さげである。だが桜子には、確信があった。
     ――あの母さんがすすめたサイトだ。必ず何かある。隠れた手がかりが仕込まれているはずよ。
     その後も盛んにマウスを転がし続けた桜子だが、ふと画面の端に反応する何かを見つけた。
    「志郎兄。これって」
    「隠しリンクかぁ……」
     志郎が唸る中、桜子が右クリックをしてみると、画面が別のページへと切り替わった。そこには、検索窓が開いている。
    「ここに要件を打つって感じのよね。志郎兄、これってこのページの管理人と繋がってるのかな?」
    「いや。多分、AIだ。試しに何か入力してみようぜ」
     志郎に促され桜子は早速、リクドウ・シックスについて問うてみた。すると十数秒後に返答がきた。曰く、機微に触れる案件につき答えられないとの事である。
    「何よそれ」
    「桜子、交代だ。作戦を変えよう」
     志郎は桜子と入れ替わりノートパソコンの前に陣取るや、キーボードを叩いた。内容は時空移動をめぐる課税理論とその争点である。
     遡る時間の長さに応じて超過累進を取ることが、果たして富の再分配につながるのか、担税力の有無から負担の応益・応能説、さらには公平の垂直・水平的考慮に至るまで考えうる限りの議論をぶつけた。
    「さぁ、どうだ」
     志郎が反応を見守ると、AIの対応が明らかに変わってきた。当初に見せた頑なな対応が緩やかなものへと変化したのだ。
    「志郎兄、これってどう言うことよ?」
    「俺達のアカウントのレベルが上がったんだよ。より深くやり取りが出来る相手だと、AIが認識を変えたのさ」
     志郎は、ここで改めてリクドウ・シックスについて質問を投げかけてみた。すると、AIは画面上に不可解な紋様絵図を映し出して来た。
    「何これ?」
     首を傾げる桜子に、志郎が応じた。
    「多分、輪廻転生をめぐる六道思想の絵図だ。真ん中に描かれているのが閻魔で、その周囲を六つの世界が取り巻いている感じだな」
    「あのさ志郎兄。悪いけど、この私にも分かるように説明してくれない?」
     桜子の要請に志郎は苦笑しつつ、噛み砕いて説明した。曰く、世界は閻魔の監視の下、天道・人道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道という六つの世界に分かれ、死と共に別の世界へと生まれ変わる輪廻転生を繰り返すのだと。
    「要するに坊主の説法さ」
     志郎が要約して見せるものの、桜子は今ひとつ納得がいかない。
    「その坊主の説法がリクドウ・シックスとどう関係するのよ?」
    「どうもシュレやセツナの様なENMA(エンマ)シリーズのゴーストをプログラミングする際の設計思想と共通しているみたいなんだ」
    「え、ちょっと待ってよ。閻魔大王に舌をひっこ抜かれたり、魂がぐるぐる輪廻転生したりって、昔からよく言うやつが、なんで未来のプログラミングと関係するのよ?」
    「過去を時空課税の財源にするためさ」
     怪訝な表情を浮かべる桜子に志郎は、問うた。
    「桜子、未来人が一番恐れるのは、何だと思う?」
    「や、分かんないけど」
    「過去の人間に未来を改変されることさ。だから、逆らえば地獄に落ちるだの閻魔の裁きがあるだの、伝承を流し過去の人間を未来から盲従させた」
    「じゃぁ、私に救国活動をさせるのも……」
    「何か魂胆があってのことだろう。全ては確実な時空課税のためってわけだ。それともう一つ、セツナの設計者のこと、覚えているか?」
    「あぁ、確か消されたっていう……」
    「俺は違うと思う」
     そう結論づける志郎の仮説に桜子は、言葉が見つからない。
     一方の志郎はさらなる核心に迫るべく、AIとのチャットを加速させていく。その矢先、突如として歴史のクリスタルが光を放った。
     たちまち二人はその光に飲まれ、新たなる時空へと連れ去られていった。

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